JRAには金を預けているだけ!

競馬日記。主に3連単フォーメーション

十年

次の桜が散る頃僕は40歳になる。なんとなく十の位が変わる年の誕生日はゴージャス感?と云うかデラックス感?と云うか特別な感じがする、あぁスペシャル感か?

 

10年前30歳を目前にした僕は地元の板橋で高圧洗浄屋をやっていた、その数年前、横浜でのキチガイ女との生活にとうとう生命の危機を感じた僕はその夜もひとしきり暴れまくり疲れ果て眠りについたキチガイ女の寝息を確認するとバイクに跨り明け方の環八を一人北上し実家へ逃げ帰った、実家の窓をバンバンと叩き叩き起こした母親は初めは驚いていたのだが、すぐに僕の顔を見て何かを察したのだろう僕を家に入れると僕にスグに寝るように勧めて来た、そして僕は泥のように十数時間眠った。それからまぁちょっとしたゴタゴタはあったが僕は実家に戻り銀座でハンバーガー屋のバイトをしたりして呑気に暮らしていた、そんな折りに小学校の同級生である「ユータ」が「暇してんなら仕事手伝って!」と、言ってきた。「なんの仕事?」と、僕が返すと「学校の油取りの仕事」と返ってきた。「学校の油取り!」なんと曖昧な説明の仕事だろうか、僕は「イクイク!」と返事をし翌朝ユータが指定した場所へ向かった。

 

「油取りの仕事」とは、夏休みに小中学校の給食室に行き換気装置の清掃を行うと云うものだった、夏の暑い給食室でボイラー設定60℃のお湯をぶっかけまくって換気装置を洗っていく、そして汗ダクになり事務所に帰ると社長が「ビール飲もう!」と言ってビールを奢ってくれた、なんと良い仕事だ!僕はユータに誘われると度々ビール目当てでそのバイトへ勤しんで行った。昼に油取りの仕事をして夜にハンバーガーを作る、と云う日もあった。つまり僕は昼に換気装置を洗い夜に換気装置を汚す、なんと云う自己完結型循環生活!そして身体を動かす生活になんとも言えない充実感を覚えていた僕はそのうちに高圧洗浄屋の会社メインで働くようになっていった。

 

30歳手前は高圧洗浄屋でバイトから社員になり始めた頃だった、そして実家を離れ会社の近くのアパートに引っ越していた。仕事を終え夜部屋に戻った僕は一人ビールを飲み少しおセンチになりながら10年前の僕の事を考えていた、20歳の時僕は「ゲージュツ家」になりたかった、椅子に座り物を書きそれで生活をしたい!と考えていた。だが、思うだけでそれに対する努力なんぞ全くしていなかった、ただブラブラしテキトーに生きていくための言い訳として「ゲージュツ家になる」と、言っていただけだった。僕はそのままのんべんだらりとした日々を過ごしていた。その20歳の頃の僕が十年後の自分の姿のほんの少しでも想像できただろうか?きっと30歳の僕は当時の自分からは全く想像のつかないモノになってしまっているだろう。そう、十年は長い、そして人は十年もあれば全く変わってしまう、面白いものだ。

 

30歳を目前にした僕は一人十年後の自分のことを考えてみた、けれどサッパリ見当もつかない仕事はもう少し慣れて上手くやれているだろうか?もう少し金銭的に余裕のある生活を送れているだろうか?世界は平和なのだろうか…けれどそれを考えても仕方のない事だ、きっと十年後の僕は今の僕が想像できるはるか彼方にいるはずだ。そして何故か僕は十年後の自分に宛てて自画像を描く事にしたなんで自画像なのか?と聞かれても困るのだが兎に角描いた、そして久し振りに絵筆を握っているとこれがなかなか楽しいのだ、それから数週間は仕事が終われば真っ直ぐアパートに帰りひたすら自画像を描いていた。

 

30歳になる誕生日の数日前僕はやっと自画像を描き終えた。描き終えてみるとなんとなくオナニーをし射精した後の様な虚無感が襲ってきた、「で?!」って思いながらその描き終えた絵を眺めていたら何となく燃やしたい衝動に駆られたのだが心の中のマジメな方の僕が小さい声で「やめなヨゥ。」と囁いたのでやめた。それから十年の間その自画像は僕の部屋に飾ってある友人の写真の裏でひっそりとしていたがこの間40歳になる事を考えながらダイキリを飲み酔っぱらった自分によって発掘された。

f:id:quri:20180731203214j:image

 

発掘してみて眺め返してみるとなかなかどうだ、自画像の出来などどーでも良い、しかしながら自画像を描いていた時の十年前の自分の姿が思い出されるではないか!あの時自画像を描こうと思った自分は間違っていなかった、その唇のハイライトにどの色を置こうかと迷っていた自分が昨日の様に思い出される、燃やさなくて良かった真面目な方の僕ナイスである。

 

40歳を目前にし僕はまた自画像を描こうと思う、理由は無い。ただ十年後の自分のことを考えながら、十年後の自分はどうだ?また途方もないところへ行ってしまっているのか?そもそも生きているのか?世界は平和か…今日は池袋パルコの世界堂によって帰ろう