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競馬日記。主に3連単フォーメーション

前略おふくろさま最終回

前略おふくろさま2最終回終わりの手紙。

 

『俺は今歩きながら泣いています。俺はさえこおばさんや岡野のおじさんの青春の日を知りません。同時に自分のおふくろの若く、可愛く、恋をした、そうした時代を考えもしなかった。でもおふくろにもそれはあったはずです。かすみちゃん、今俺は山形であなたのことを思い、一人で涙を流しています。たとえば、俺とかすみちゃんが万一一緒になったとする。一緒になって蔵王に住んだとする。2人の間に何人か子ができる。子供たちは大きくなる。一人前になる。彼らは町に出て働き始める。俺たちは年をとり、俺が先に死んでかすみちゃんが残る。かすみちゃんが一人で蔵王に残る。そのとき子供たちはかすみちゃんのことを、しわだらけのおふくろとしかみない。昔《わけたがみ》で働いていた頃の、二十歳過ぎたばかりのかすみちゃんを知らない。そんな母親を知ろうともしない。昔母親が若かったこと、母親に青春があったということ』
 さぶちゃん、私はこの手紙をどっかに大切にしまっておこうと思います。そして、将来私の子にそっと見せて自慢をしてやる。
「みなさい、母さんにもこういうふうに輝くばかりの青春があったのよ!」

 そうだかすみちゃん、俺もとっとく。
 あんたのこの手紙を、俺も大事に。
そしていつか老け込んで、入れ歯なんかびちゃびちゃ洗うようになったとき、俺は俺の子や孫たちに、この手紙を見せて言ってやる。
「俺にもこういう青春があったんだ」
 それから、かすみちゃんや海ちゃんや半妻さんやとしおさんが、もしもいつの日か老け込んで、子供たちから厄介者あつかいされたりしたら、俺は飛んでって、その子供たちにこの手紙をみせて言ってやる。
「てめえらふざけんな。俺たちだって、こういうキラキラした若い日があったんだ」

 

そうだ僕たちもいつか老いて死んで行く、キラキラとした若い日はひっそりと胸に抱いたままね